はじめに
Blenderでキャラクターを動かす際に出てくる「アーマチュア」「ボーン」「スケルトン」「リグ」という用語は、他の3DCGソフトから移行してきたユーザーにとって混乱しやすいポイントです。
最初にまとめてしまうと、アーマチュアはBlender特有の呼び名で、他ソフトで言うスケルトン(骨格)に相当します。一方、ボーンは骨格を構成する各「骨」、リグは骨格を操作するための仕組み全体を指します。
本記事では、それぞれの用語のBlenderでの定義と役割を解説し、似た言葉や概念との違い・使い分けを示します。
アーマチュア(Armature)とは何か?
アーマチュアとは、Blenderにおける「骨格オブジェクト」のことです。
他のソフトでいう「スケルトン(Skeleton)」に近い概念で、キャラクターなどのメッシュを動かすための骨組みとなるものです。
Blenderではアーマチュアはひとつのオブジェクトタイプであり、その中に複数の骨(ボーン)を含みます。
言い換えれば、アーマチュアはボーンの集合体です。

例えば人間の腕のアーマチュアであれば、「上腕のボーン」「前腕のボーン」「手のボーン」など複数のボーンで構成された一本の骨格(アーマチュア)になります。
他のソフトから来た人にとっては、「アーマチュア」という言葉自体が聞きなれないかもしれませんが、多くのソフトでは単に「スケルトン」や「ジョイント(関節)」と呼んでいるものに相当します。
アーマチュアはBlender固有の名前ですが、基本的にはスケルトン(骨格)と考えて差し支えありません。
(補足)アーマチュアとボーンの動き方の違い
Blender上ではアーマチュアは一つのオブジェクトとして扱われ、オブジェクトモードでアーマチュアごと移動・回転させると中の全てのボーンがまとまって動きます。
一方、後述するポーズモードでは個々のボーンを選択して動かすことができ、こちらがキャラクターの関節を曲げる一般的な操作になります。例えば、アーマチュア全体を動かすとキャラクター丸ごと移動しますが、腕のボーンだけを動かせば腕だけが曲がるといった具合です。
ボーン(Bone)とは何か?
ボーンとは、アーマチュアを構成する各パーツで、いわゆる「骨」に相当します。
一本一本のボーンが関節のように振る舞い、メッシュ(キャラクターの服や皮膚の部分)に影響を与えて変形させます。Blenderのマニュアルでは「ボーンはアーマチュアのベースとなる要素です」と説明されています。
つまりボーンはアーマチュア(骨格オブジェクト)の中身であり、キャラクターを動かす最小単位のパーツです。
ボーン同士は階層構造(親子関係)を持ちます。
上腕のボーンに対して前腕のボーンが子になるように繋げることで、腕全体の骨格を再現します。
親ボーンを動かせば子ボーンも追従して動くため(例えば上腕を上げれば前腕と手も一緒についてくる)、この親子関係を作ることで人間の腕と同じような連動を表現できます。

他ソフトでは「ジョイント」という言い回しをするものもあるかと思います。
これはBlenderでいうボーンとほぼ同じです。Mayaや他のDCCツールではボーンを「関節(Joint)」と表現することも多いですが、Blenderでは可視的な「骨」の形で表現されることからボーンと呼ばれます。
実際、Blenderでもボーンの表示方法は設定で変えることができ、棒状や箱状など様々なビジュアルで表示できます(見た目は変えても役割は同じです)。

(補足)ボーンの役割と種類
ボーンは基本的にメッシュを変形(デフォーム)させるために使われます。
例えば腕のボーンを曲げると対応する腕のメッシュ部分が曲がります。こうしたメッシュに影響を与えるボーンは特にデフォーム(変形)ボーンと呼ばれます。
一方で、後述するリグを組む際に、メッシュを直接動かさない補助的なボーン(コントロール用のボーン)を配置することもあります。そうしたボーンはコントロールボーンなどと呼ばれます。
IKのコントローラとして使うものが一般的かもしれません。複雑な動きを簡単にするために使います。
いずれにせよ、ボーンはアーマチュアの中の一本一本の「骨」であり、キャラクターの各部位を動かすための軸となるものです。
スケルトン(Skeleton)とは何か?
スケルトンとは、本来「骨格」や「骸骨」を意味する英単語です。
3DCGにおいてはボーンが階層構造で繋がった全体、すなわち骨格全体を指します。
先述のアーマチュアがまさにその「骨格」に当たり、Blenderでは用語としてはアーマチュア=スケルトンという位置づけになります。なので、Blenderにおいて「スケルトン」という言葉はあまり使いません。
他ソフトから来た方は「スケルトンを作る」「スケルトンをバインドする」といった言い回しに慣れているかもしれません。これはBlenderで言えば「アーマチュアを作る」「アーマチュアをメッシュにスキニングする」に相当します
Blenderには「スケルトン」というオブジェクトは存在せず、あくまでアーマチュアオブジェクトとして扱われます。
しかし、一般的な会話ではアーマチュア(骨格)を指してスケルトンと呼ぶこともあります。
特にBlender以外のソフトやゲームエンジン(UnityやUnreal Engineなど)では、「Skeleton(スケルトン)」という用語を使うため、他環境の情報を読む際には「Blenderでいうアーマチュアのことだな」と置き換えて理解すると良いでしょう。
まとめると、スケルトン=骨格全体(骨の集合体)であり、Blenderではそれをアーマチュアと呼んでいる、と覚えておきましょう。
実際、Blenderの外に目を向ければ「スケルタルアニメーション(骨格アニメーション)」という用語も使われており、Blenderユーザーであっても他ソフトや論文の文脈では「スケルトン」という言葉を目にすることがあります。
どちらも指すものは「ボーン同士が親子でつながった骨格」です。
リグ(Rig)とは何か?
リグとは、キャラクターを思い通りに動かすための制御装置や仕組み全体のことです。
リグという言葉自体は「装置」や「仕掛け」を意味し、アニメーションの文脈では骨格(ボーン)に操作用のコントローラーや制御機構を組み合わせたものを指します。
Blenderのマニュアルでも、「リグとはマリオネット(操り人形)を動かすための棒や紐(=コントロール)のようなもの」と説明されています。
具体的には、リグには以下のような要素が含まれます。
- ボーン(骨格そのもの)
- メッシュを変形させるデフォーム(変形)ボーンの集まり
- コントローラー
- ボーンを間接的に動かすための制御用オブジェクト。
- Blenderの場合、多くはコントロールボーンやエンプティなどで作られます。
- IK/FKの設定やConstraints(拘束)
- IKで自動的に関節が曲がるようにしたり、膝や肘などの関節の回転を制限する「制約」を組み込んだりする設定
- ユーザーインターフェース
- 操作しやすいように配置されたコントローラー類
要するにリグとは、「ボーンを制御する仕組み」と「その操作インターフェース」をまとめたものです。

そして、このリグを構築することをリギングと呼び、これはアニメーション制作の準備段階で重要な工程です。
リグのおかげで、アニメーターは直接ボーンを1本ずつ動かさなくても、複数のボーンをまとめて直感的に操れるようになります。
例えば、足のIKリグが組んであれば、足首に用意されたコントローラーを動かすだけで膝が自動的に曲がり、キャラクターが足を踏み出すようなポーズを簡単に付けられます。
リグとボーンの違い
「ボーンが入っているモデル = リグ済みモデル」と表現することがありますが、厳密にはボーン(スケルトン)そのものはリグの一部でしかありません。
単にボーンを入れてメッシュに重み付け(スキニング)しただけ(=FK)でも一応動かせますが、それだけでは毎回細かいボーンをいちいち動かす必要があり大変です。
そこでリグを組むと、より扱いやすい操作で骨格を動かせるようになります。
リグには通常、アニメーションを効率化するための仕掛けが含まれており、ボーンとボーンの関係性を調整したり、ユーザーが触るのはコントローラーだけで済むよう工夫されています。
例えば、顔の表情を変えるリグでは、「まゆげ」や「口角」のコントローラーを設け、それを動かすと複数の顔のボーンやシェイプキーが同時に動作する、といった具合です。
まとめると、リグ = 骨格(ボーン) + 制御用の仕組み全体です。
Blenderにおけるリグはアーマチュア(ボーンの集まり)を基盤としつつ、必要に応じて追加のボーンやコントローラー、IK設定などを組み合わせて作られます。
「リグを入れる」「リグを組む」という時、それは単にボーンを入れる以上の意味で、「操作しやすいように骨組みを組み合わせて連携させる」ことまでを指しています。
用語の重なりと使い分け
以上を踏まえて、紛らわしい用語の対応関係を整理します。
Blender内の正式な用語と他ソフトや一般的な用語を対比すると次のようになります。
アーマチュア(Armature)
Blender特有の呼称。ボーンを内包するオブジェクト
一般的には「スケルトン(Skeleton)」や「骨格」に相当
ボーン(Bone)
骨格を構成する各「骨」
「ジョイント(Joint)」とも呼ばれる
スケルトン(Skeleton)
Blenderでは公式にはこの言葉は使わずアーマチュアと呼ぶ
文脈によってはアーマチュアの意味でスケルトンを使っていることもある
リグ(Rig)
骨格を操作するための仕組み全体
骨格(スケルトン)+制御コンポーネントを含む広い概念
他ソフトでも「リグ」という概念は共通
おわりに
他のソフトからBlenderに移行したり、またはその逆にBlenderを触りだした直後はこの用語の違いに戸惑うかもしれません。しかし、「アーマチュア=骨格(スケルトン)」「ボーン=骨(ジョイント)」「リグ=骨格+操作装置」という対応関係さえ押さえておけば、大枠で混乱することは減るはずです。
本記事が、Blenderにおけるアーマチュア・ボーン・スケルトン・リグの違いを理解する助けになれば幸いです。
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